「無限」
無限(むげん、infinity、∞)とは、限りの無いこと。
古くから私たち人間は、限りの無い命に憧れてきました。秦の始皇帝は不老不死の薬を求め、この日本に徐福一行を送り込むも、帰ってこなかったと伝えられます。また、「インディジョーンズ最後の聖戦」に登場する聖杯を護る騎士の長生きしすぎて疲れ切っていた姿も皮肉の効いたお話しでした。
人の命に限りがあると知る私たちは、「魂よ永遠であり、種よ永遠であれ」と願うことが我々の本能と理解していると言って良いのでしょう。
日本における陶芸の原点と私が考える吉備特殊器台(弥生時代)には、永遠を希求する弧帯文が添えられていたり、または刻まれています。 これは生命の豊かさ美しさを永遠に残そうとする意志(本能)こそが芸術の本質だと教えてくれます。
また、日本現代美術の代表的作家で「モノ派」の哲学的リーダーであったリ・ウーハンは、作者と鑑賞者の間に交わされる終わりの無い思考の交感こそが芸術の本質だと述べています。
この美しい曹源寺の庭で、静かに佇む作品たちの発する小さな声や波動に、是非、耳を傾け眼を凝らして御覧下さい。鑑賞者であるあなたが、この波動を受け取り、そして魂で反応する、その終わりの無い会話をお楽しみ頂きたいと思います。そして、その心の会話こそが、芸術の果す役割そのものだと考え、テーマを「無限」といたしました。
art director 近重
注;徐福一行→「徐福伝説」を参照
注;「インディジョーンズ最後の聖戦」はスピルバーグ制作の人気映画シリーズ
原題:Indiana Jones and the Last Crusade