「無心」考
第七回 曹源寺庭園美術展 趣旨文
「無心」考 世界と響き合うひととき
私たちは日々、思考や判断、欲望や不安に導かれて生きています。何かを得ようとしたり、何かを避けようとするその心は、自己を形作る一方で、世界との距たりを生み出しているようにも思います。 しかし禅は、その分別のざわめきが静まったときに現れる より深く澄んだ在り方を指し示してきました。
無心とは、心を空白にすることではなく、作為や執着を離れ、世界と自己とが隔てなく響き合う状態。『無門関』に示される「無心是道」は、特別な悟りではなく、“あるがまま”の行為こそが道であると簡潔に伝えています。
「ゾーン感覚」に現れるもう一人の自分
この感覚は禅の修行に限りません。スポーツや創作の中で、ふと我を忘れ、時間の感覚が消え、身体が自然に動いていく—いわゆる「ゾーン感覚」の体験を、多くの方がお持ちのことでしょう。そこでは意図を超え、行為と存在とが一体となり、まるで神の視座を得たかのように、純度の高い表現が立ち現れます。
芸術が場と溶け合い、生まれる「無心」の境地
作品はその意図を離れ、光や風とともに呼吸し
曹源寺の庭が、そのすべてを静かに受け止める
そこで生まれるのは、観る人の心に響く
「無心」の気配
ハッとするような心の震えが、あなたの内に
広がりますように。
本展が、そのような在り方に触れるひと時となり、来場の皆様の内に静かなそして心地よい波紋を広げていくことを心より願っております。
2026年4月
企画監修 近重博義
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